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 AI(人工知能)が加速度的に進化し、生成AIの活用も日常的に広がっている。利便性とともに人権や民主主義へのリスクも指摘されるが、憲法の核心である「個人の尊重」の視点からどう考えればよいのか。憲法学者の山本龍彦・慶応大学教授と青井未帆・学習院大学教授に論じ合ってもらった。

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対談した山本龍彦さん(左)と青井未帆さん=東京都中央区、嶋田達也撮影

無力化される脆弱な「個人」

 ――「すべて国民は、個人として尊重される」と定めた憲法13条では、様々な情報をもとに自分の頭で理性的に考えて選択する「強い個人」が想定されていました。しかし、SNSの隆盛や、刺激的なコンテンツで閲覧数を稼いで広告収益などを上げようとするアテンション・エコノミーが進んで言論空間に分断が生じる中、これまでの「個人」像が挑戦を受けているのではないでしょうか。

 山本龍彦さん 夏の参院選の結果は両義的でした。これまでは組合や経済団体など様々な老舗組織の影響力が強く、個人が存在感を発揮できない面がありました。SNSから直接情報を得て判断することが当たり前になり、個人が従来型の中間団体支配から解放されたとみることもできます。

 しかし、その個人の判断が本…

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